腕時計セルフメンテナンス方法

専用工具がなくても日常生活のアイテムで時計のメンテナンスは可能です。


ほんのちょっとケアするだけで時計の持ちがまったく違ってきます。
ケアを行っていない、という方にはこの機に腕時計の簡単なメンテナンスの方法を覚え、習慣化していただきたいと思います。

時計の大敵は 「汗」・「水分」・「ほこり」 です。

ステンレスは錆びないのではなく、実際には「サビにくい」という認識が正解です。
汗をかきやすい夏は汗に含まれる塩分により簡単に腐食が始まり、錆が発生します。特にリューズ周辺に錆が発生するとリューズがねじ込めなくなり、そこから微小ゴミや水が内部に侵入して重大な故障の原因にもなります。
汗によって革ベルトも変質します。
肌に直接触れる裏部分は、高級革ベルトでも汗じみで色が変化するため、大量に汗をかいた場合はこまめにふき取ったほうがよいでしょう。また、ほこりは汗や水分によってブレスやリューズの隙間などにたまり、ブレスの動きを固くしたりリューズがねじ込めなくなったりします。
これらを防ぐために、日々のメンテナンスを行うことが大切です。
故障してしまうと修理代金も高くつき、症状によっては同等の中古品が購入できるくらいかかってしまうこともあります。
余計な出費を防ぐ意味でもセルフメンテナンスを習慣にしていきましょう。

 

ここで紹介する時計のセルフメンテナンスに必要なアイテムは下記4点です。

 

①乾いたタオル  ②柔らかい歯ブラシ(使い古しで可)  ③綿棒  ④爪楊枝

どれも日常生活で使用しているものばかりですので、用意は簡単だと思います。
これらのアイテムを上手く使いわけて腕時計の汚れを落とすことができます。
週に1回か2回のペースで掃除できるのが目標です。

 

 

ケースの汚れの落とし方 目に見える部分はもちろん、ケースと裏ブタの隙間やくぼみ、ケースのエッジ部分等、細かい隙間に汚れがたまりやすいので注意が必要です。普段は歯ブラシで軽くこすったり、乾いたタオルなどでふき取るだけでも構いませんが、1か月に1度は、ブレス、革ベルトをはずしてしっかり汚れを落としましょう。
先程の道具を使って順を追って掃除の説明を致します。

 

 

手入れ①

・木製爪楊枝で隙間やくぼみを突いて汚れを浮かせる。
…金属製の尖ったものは厳禁です。プラスチック製でもめっき面を傷つける場合があります。 特に肌と接触するケースパックはどうしても皮脂汚れがひどく溜まってしまいます。 汚れが取れにくくなる前に、爪楊枝で取り除いておきましょう。

手入れ②

・歯ブラシで汚れを取り除く。
使い古した歯ブラシは時計掃除に最適です。
爪楊枝で浮かせた汚れは乾いた歯ブラシを使ってブラッシングを施します。
ブラシはガラスやケースを傷つかないように歯先が細く柔らかいものを使用してください。

手入れ③

・乾いたタオルできれいに拭き取る。
乾いたタオルを用いて風防からケースまで全体の汚れを拭き取ります。
強く擦らず、優しく拭くことを心がけてください。
強く拭くと汚れ自体が研磨剤のような効果になって、逆に傷が付いてしまいます。

手入れ④

・拭ききれていない細部は綿棒で。
綿棒で細かい箇所を仕上げれば完璧です。
歯ブラシやタオルで取り除くことができなかった部分の汚れは綿棒で掃除します。
綿棒の先を指で細めたりすると、さらに細かい部分まで掃除ができます。

 

 

ブレス&革ベルトの日常ケア

 

▼ブレスレット  肌に触れているブレスは皮脂や汗汚れがつきます。

 

手入れ①

・木製爪楊枝で隙間やくぼみを突いて汚れを浮かせる。
ケースのときと同様に、爪楊枝を使ってコマとコマの間にある汚れを浮かせていきます。
カッターで爪楊枝の先端を細くすれば、入りにくい部分にも対処できます。

手入れ②

・ウェットティッシュペーパーを巻きつける。
ウェットティッシュペーパーをブレスの長さに合わせて折り畳み、それをブレスに巻きつけます。
香料のついたウェットティッシュは香料成分が金属を変質させる場合もあるため、無香料のものを使用してください。

手入れ③

・ウェットティッシュペーパーで汚れをふき取る。
ウェットティッシュペーパーをブレスのコマを幅方向に動かす。
このときに爪楊枝をティッシュの上から隙間にあてて汚れをティッシュ側に移すように拭き取ります。

手入れ④

・ティッシュの黒ずみがなくなるまで繰り返す。
ティッシュを広げると、黒ずんで汚れが落ちているのがわかります。
この2~4の作業を繰り返して、ティッシュに黒ずみが付かなくなるまで行います。

手入れ⑤

・頑固な汚れは歯ブラシを使用。
頑固な汚れは歯ブラシを使用します。 特に隙間の汚れを落とすために少しだけ濡らして磨いた場合は、早めに水分を拭き取ることです。そのままにしておくと、ブレスが錆びる恐れがあります。接合ピンのあたりは特にしっかりふき取ってください。 ピンが錆びて固着してしまうと、ブレスがしなやかに曲がらなくなったり、接合ピンの固定にねじを使用している場合、ブレス駒調整ができなくなったりします。

 

 

▼革ベルト 着用後はきれいに拭いて乾燥させる。

 

手入れ①

・乾いたタオルでまんべんなく拭く。
乾いたタオルを使ってレザーベルトの内側の汚れや汗を拭きとります。
こまめに拭くことで革は長持ちしますが、夏の革ベルトの着用は避けたいところです。

手入れ②

・日陰で自然乾燥。
直接日光が当たらない、風通しの良い安全な場所で自然乾燥させます。
革ベルトは毎日着用せず、休みをはさみながら使うのが望ましいので、毎日つけたい場合は予備のストラップを用意して2,3日おきに付け替えるとよいでしょう。

念入り手入れ①
・固く絞ったタオルを内側の汚れに当てる。
濡れたタオルを使うとレザーを痛めてしまうので、固く絞ったタオルを使用します。
汗や汚れをタオルに吸い取らせるように当てるのがコツです。
強く擦らないように注意してください。

念入り手入れ②
・専用の消臭スプレーで匂いと雑菌を断つ。
肌が触れるベルト内側に、専用の消臭スプレーをかけます。
あとは日陰で自然乾燥で大丈夫です。
スプレーの使用は週2回程度で充分な効果が得られます。

 

 

革ベルトスプレー革ベルト消臭スプレー 推定価格 1,050円~


オーガニック製法で作られたレザーベルト用の消臭スプレー。
3回吹きかけるだけで臭いを抑えるほか、除菌効果も期待できます。
時計工具店や皮革専門店、ホームセンターなどで販売しています。

 

 

 

ブレス&ベルトの外し方

 

▼ラグ周辺をきれいにするときや別ストラップへの付け替えの際、ブレスやベルトを外す必要がありますが、それに使うのが専用工具の「バネ棒外し」です。作業自体は単純ですが、乱暴に扱うとケースを傷付ける恐れがありますので、丁寧かつ慎重に作業することが大事です。

 

バネ棒外しバネ棒外し 推定価格 500円~

ケースとベルトをつないでいる「バネ棒」を外すことができる腕時計専用工具です。
ベルトを外せば掃除もしやすくなるので、1本持っていれば役に立ちます。

 

 

▼専用工具「バネ棒外し」を使ってストラップを取り外す
一見、難しそうなストラップ外しですが、要領さえ押さえれば手軽にできるようになります。
次の4工程に従って、ケースや自分の手を傷つけないように心がけましょう。

 

 

外し方①

・傷を付けないためにセロテープで保護
バネ棒が飛び出してラグ周辺を傷付けることがないように、ラグ全体にセロテープを貼って保護します。
ラグを囲うようにセロテープを包み込むように貼ると全体をカバーできます。
あらかじめ貼りやすい大きさにカットしておくと作業が楽です。

外し方②

・バネ棒外しを差し込み、バネ棒を縮込ませる
セロテープの保護ができたら、ラグとベルトの間を確認します。
二股に分かれているバネ棒外しをこの隙間に入れて、バネ棒を縮込ませます。
バネ棒外しの先端は、二股のツメのような形状になっているので、そこにバネ棒のつばを引っかけます。
二股の先端は鋭く尖っていますので、手を傷つけないよう注意してください。
また無理に力をかけすぎると先端を破損することがあります。

外し方③

・バネ棒をラグの穴から外す
縮込ませたバネ棒を取り出す際、バネ棒外しでその先端を押さえたままゆっくりとずらします。
このとき気をつけるのが、バネ棒が飛び出して、なくさないように注意してください。
大きめのビニール袋の中で作業すると、万が一バネ棒が飛んでもなくさずに済みます。

外し方④

・片側を外せばもう片方も外れる
バネ棒の片側を外せば、あとは簡単にベルトを外すことができます。
これでベルトおよび本体の手入れが格段にしやすくなります。
取り外したバネ棒は無くさないように、箱もしくは小さなビニール袋にいれておきましょう。ブレスやベルトをケースに装着させる場合は、ラグにセロテープを貼った後、逆の手順でバネ棒の片方をラグ穴に入れ、もう片方のバネ部分をバネ棒外しで押し下げた状態でラグの穴へと差し込みます。
ベルトを引っ張り、両方の穴にバネ棒がしっかり収まっていることを確認してください。

 

 

※バネ棒の構造を解説します。
ブレス&ベルトを固定するパーツ

バネ棒外しバネ棒はその名のとおり、両端にバネが入っている棒状の部品です。腕時計のブレスとベルトは、このバネ棒によってケースに接続されています。
通常、バネは伸びた状態だが、先端が縮込む仕組みになっていて、その箇所がラグの内側にある穴に入るようになっています。バネ棒が錆びて固着してしまうと、本体からブレスをはずせなくなってしまうので、ブレスを定期的に外して確認したほうがよいでしょう。動きが固くなっていると感じたら早期の交換をお勧めします。

 

※ラグ穴が開いている場合の外し方
腕時計によっては、ラグのサイド表面まで穴が開いているものもあります。
このタイプはバネ棒の先端が細い棒になっている方を使い、先端を穴に差し込んでバネ棒を縮込ませ、ベルトを取り外します。

バネ棒外しを持っていない場合は、押しピンで代用できることもあります。使い方はバネ棒外しと同じですが、一般に押しピンはバネ棒外しの先端より太いことが多いので、ラグ穴が小さい場合は無理に押し込まないでください。

その他にセーム革があるとより便利です。

※セーム革 推定価格 350円~
ステンレスやゴールドについた汚れの拭き取りに使います。
シカなどの皮を植物油でなめした革クロスで、洗うことができるので何回でも使用できます
また、細かい傷とりには宝飾用研磨剤を使用しますが、やり方によってはかえって傷をつけてしまう場合もありますので、自信のない方はプロに任せたほうが安心です。