第25回  シチズン カンパノラ グランドコンプリケーション

国産時計メーカーというと品質は良いが安価であるというイメージが強く、高級時計としての認知が低い為、日本ではあまり人気が無いというのが現状です。シチズンの場合、信念が「市民のための時計作り」とうことで、リーズナブルな時計をずっと生産していたことと、機械式時計から撤退していたため、高級時計メーカーとしての認知はほとんどありませんでした。しかし、セイコーのクレドール、グランドセイコーなどは、海外では高級時計として認知されており、また、近年の高級時計ブームによりシチズンとしてもそうした高級時計のラインナップを揃える必要性を感じていました。

  フラグシップ機として上品かつシンプル、実用性を売りにしたザ・シチズンがあります(グランドセイコーに相当)が、シンプルすぎて、いまひとつ華やかさに欠けます。そこでマスプロダクトを考慮せず、こだわりを持った最高級時計のコレクションを企画しました。それが、カンパノラシリーズであり、その中で最高機種が、グランドコンプリケーションなのです。
カンパノラの名前の由来ですが、イタリア南部カンパニア地方という地名があり、ノラという街があります。伝説では、このノラの街にある教会の鐘が、歴史上、初めて人々に時刻を知らせる為に鳴らされた鐘だと言われています。
そして、それからノラの街の人々は同じ時間を共有し、秩序ただしく生活するようになったと言われています。 それは全土に広まり、人々はこのカンパニア地方のノラの鐘を「カンパノラ・ベル」と呼びました。
シチズンはこれを踏まえて、この時を報せる時計の起源とも言うべき鐘の名前をコレクション名としシチズンの物づくりの思想「技術と美の融合」を具現化するために最高級の腕時計を作り上げ、2000年カンパノラシリーズをデビューさせました。その当時流行になりつつあった、大きいサイズのケース2種類、丸型と縦長トノー型を採用し、部品、素材のひとつひとつにこだわりました。ベースムーブメントはシチズン製Cal.6770で、時計の6大複雑機能の内、ムーンフェイズ、スプリットセコンドクロノグラフ、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダーの4つをクォーツ式で実現したものです。これを機械式で行えば、何千万円もするものになってしまいますが、クォーツ式にすることで低価格にできます。
このムーブメントはシェルマングランドコンプリケーション、GSXボラードなどのショップオリジナル時計や他のブランドなどで、グランドコンプリケーション用のベースとして広く採用されています。ケースにはシチズンが独自に開発した金属表面保護処理であるデュラテクトを施し、曲面加工が難しいサファイアガラスを両面ドーム状に研磨してガラスを通して見る文字盤の歪みが少なくなるように工夫されています。文字盤そのものもいくつものパーツを組み合わせて、また、各パーツも細かな装飾加工をすることで立体的に作られています。
毎年発表される限定モデルでは、文字盤にウルシを使ったものやシェルを象嵌したものもあります。2006年モデルではエコドライブを搭載し電池交換を不要にしました。(それまでのモデルはすべて電池式で電池寿命約2年です。)
現在は大丸百貨店(心斎橋店)のみですが、セミ・オーダーサービスを始めています。店頭に用意された文字盤、小窓、見返しリング、針、ベルト等を選ぶことにより、1万通り以上の組み合わせがあり、自分だけのカスタマイズした時計を作ることができます。
店頭に専用コンピューターを設置して、各パーツを画面上で組み合わせて、その場で見ることができます。既製のデザインに飽きた方、人とは違う時計を欲しい方、試してみてはいかがでしょうか?