第8回 メイド イン ジャパン

高級時計というと皆さんはどこの国を思い浮かべるでしょうか?
まず、出てくるのはスイスでしょう。 多くの有名な時計ブランドがスイスで創立され、また本社をスイスにおいています。
雲上ブランド(超名門高級ブランド)のパッテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンタン、ブランパンを始め、オメガ、タグ・ホイヤー、ブライトリング等、よく耳にする高級時計メーカーはほとんどスイス創立です。
最も有名なロレックスは、意外にも創立はイギリスですが、後に本社をスイスに移転しています。また母体が宝飾ブランドのカルティエはフランス、ブルガリはイタリアと、高級時計で最近日本のメーカー名は全然出てきません。

  日本の代表的時計メーカーのセイコーは、1969年に世界初のクォーツ時計を販売し、
スイスの時計産業に「クォーツショック」を引きおこしました。
時間に正確でしかも安価なクォーツ時計の出現により、高価な高級機械式時計中心のスイス時計産業界は大きな打撃を受け、多くのメーカーが倒産、事業縮小、あるいはクォーツ時計製造への転換を迫られました。
今日でも世界で製造される時計の90%以上はクォーツ時計であり、多くの時計専門誌で取り上げられている高級機械時計は、ほんの数%にすぎません。
しかし、そうした時計専門誌で、セイコー、シチズン等の国産の時計が大きくとりあげられることはあまりありません。 また、高級機械時計で国産をお求めになる人は非常にに少ないのが現状です。
海外で、セイコー、シチズンは人気が高いのに、残念なことです。

でも、人気の海外ブランド高級機械時計に使われている一部のパーツがメイド イン ジャパン で占められているのを、皆さんはご存知でしたか?
そのパーツとはサファイア風防(針、文字盤を保護するガラス)です。時計に使用されている風防には、おおまかに分けて、プラスチック製、ミネラルガラス製、サファイアガラス製の3つがあります。
高級機械式時計は、ほとんどがサファイアガラスを採用しています。サファイアガラスとは、無色透明の合成サファイアで作られたガラスのことで、ダイアモンドのつぎに硬く(硬度9)傷つきにくい反面、加工が非常に難しく品質管理が大変のが難点です。
このサファイア風防を、日本の信光社というメーカーが全世界の50%を製造しており、海外の2次加工メーカーを通じてスイスの高級時計全体の約3割、また国内はほぼ独占しています。日本で最も人気のあるロレックスもここのサファイア風防を使用しているといわれています。
不純物、欠陥を含まない無色透明な合成サファイアを作ることは難しく、さらに棒状の合成サファイアをスライスして、均一な円盤状にする特殊な技術を持つメーカーは世界に数社しかないと言われています。その1つが日本のメーカーであるということは非常に嬉しい限りです。

 また、機械式時計に無くてはならないテンプの振動を制御するヒゲゼンマイというパーツは、世界でヒゲゼンマイ専門メーカーのニヴァロック社(スイス)と日本のセイコー、この2社でしか製造していません。 セイコーはクォーツの登場とともに、一時ヒゲゼンマイから撤退していましたが、90年代に復活し自社のグランドセイコー等に搭載しています。 現状では、セイコーの占める割合は低いと思いますが、そのうち高級機械時計の半分はセイコーのヒゲゼンマイを使うようになるかもしれません。
あまり知られないところで頑張っているメイド イン ジャパン をもう一度見直してみてはいかがでしょうか?