第9回 ダイバー時計について

今回はスポーツウォッチのなかで最も人気のあるダイバー時計について説明したいと思います。
空気のない海中における活動をサポートするダイバー時計は、ダイバー達にとって必携のツールです。 命にかかわるボンベの空気の残量を知る目安となる潜水時間の経過を示すダイバー時計は、いわば命綱です。そのため実際に潜水に使用できるダイバー時計は、ISO(国際標準化機構規格)とJIS(日本工業規格)の双方でそのスペックが厳密に定義付けられています。
必須前提条件は
「少なくとも100mの潜水に耐え、かつ時間を管理するシステムを持つ時計」
「潜水能力の1.25倍の圧力に耐える耐圧性があること」 の2点です。
また要求事項として
「誤動作防止機能付き回転ベゼルを備えていること」
「暗所で25cmの距離から時刻や作動状態が認識できること」
「濃度が3%の食塩水に24時間放置しても異常がないこと」 が定められており、これらをクリアしていないと、ISOやJISでダイバー時計として認められません。
一般的なダイバー時計は、回転ベゼル、ねじ込式リューズ、エクステンションのついたブレスもしくは、伸縮性のあるラバーベルトを備えています。そのなかで、ねじ込式リューズは必須のものでしょう。 防水200mといってもあくまで静水圧の中での話なのです。 例えば波打ち際で、波に揉まれたり、泳いでいて時計を水面に強く打ち付けたりした場合、瞬間的に20気圧以上に相当するG(重力)を受けることがあります。 するとそのショックで瞬間的にリューズが浮き上がり、内部に水が進入してしまう可能性があります。 ねじ込式リューズはそうした事故を防止するものです。
ダイバー時計の元祖といえば、ロレックスのサブマリーナとオメガのシーマスターが挙げられるでしょう。 サブマリーナは初の回転式ベゼルを搭載したモデルとして1953年に登場し、自動巻きのダイバー時計の超定番として現在に至ります。 バリエーションとしてガスエスケープバルブを装備し、より深い潜水を可能にしたシードウェラーがあります。
一方のシーマスターの初代は1948年の登場で、自動巻き、クォーツ、クロノグラフ付、ガスエスケープバルブ付など、スペック、価格で豊富なバリエーションがあり、素潜りの世界記録を樹立したジャック・マイヨールとのコラボレーション等もあります。
しかしながら、ロレックスやオメガは、プロダイバーの方は陸上でされることは多いのですが、仕事現場では、ほとんど使用されていません。 セイコーのクォーツ式ダイバーや、カシオ、スントなどのデジタル式ダイビングコンピューターが席巻しています。 これはプロダイバーの仕事が多様化して単に時間経過がわかるだけでは機能不足なことと、何十万円もする高額な時計を過酷な環境に持ち込むのは忍びない、ということだと思います。海水の塩分は時計にとっては極めて有害なのです。ですから、ダイバー時計を海でした後は、必ず水洗いして、海水を落としてください。 海で使用できるのは短時間に限られます。いくらステンレス製であっても海水が付いたままで長時間放置すれば、錆が発生することもありますし、パッキンも痛みます。 ダイバー時計を海で使用できるのは、あくまで時計が完全な場合に限ります。 メンテナンスを怠れば、使用中に故障して命に関わる場合も出てきます。
万が一、内部に海水が入り込んだと思われる場合は、即オーバーホールに出してください。 ほおっておくと2,3日で内部が錆びてしまい、完全に使い物にならなくなってしまいます。 そうなった場合、買い換えた方が安いかもしれません。