第13回  新世代のクォーツ時計

安価でありながら、正確無比に時を刻みつづけるクォーツ時計ですが、唯一の弱点が、電池寿命の問題です。 機械式では、止まってもゼンマイをきちっと巻いてやれば再度動きますが、クォーツ式は電池が切れてしまえば、電池を新しいものに交換しない限り動きません。 通常電池の寿命は2~3年位です。(最近は消費電力を抑えたムーブメントを使用することにより、10年もつものもあります) 高級時計などは裏蓋を開けるのに特殊な工具を必要とするものもあり、電池交換は以外とわずらわしいものです。
この問題を解決したのが、セイコーのキネテックに代表される自己発電型クォーツ時計、そして太陽電池を使用したシチズンのエコドライブ、カシオのタフソーラーなどです。
セイコーのキネテックは自動巻き式のローターによるゼンマイの巻き上げ機構を発電用に応用したものです。 自動巻き式と同様にローターが回転すると、それが歯車を介して約100倍に増速されて、発電ローターを超高速で回します。この発電ローターと発電コイルとの間に電磁誘導による電気が発生します。その電気はキャパシター(蓄電用コンデンサ)に貯えられて、時計を駆動するエネルギーになります。 最初のうちは、フル充電で2~3日ぐらい稼動する程度しか充電されませんでしたが、消費電力の省力化や、キャパシターの改良、不使用時の省エネモード等の採用により、フル充電で6ヶ月以上稼動するようになりました。 キネテックは1986年にスイスのバーゼルフェアで参考出品されて、世界の時計界に大きな衝撃を与えました。 そして1988年にドイツで先行発売され、続いて日本でも発売され、現在セイコーの主力商品となっております。
太陽エネルギーを利用することで電池交換を不要にしたのが、シチズンのエコドライブ、カシオのタフソーラーです。 こちらは、当初アナログ式より消費電力の少ないデジタル時計で実用化されました。 一度フル充電しておけば、光を当てなくても3~6ヶ月くらい動き続けます。こちらも当初は、時計の全体の1/3から1/2を太陽電池が占めていましたが電池の小型化や、透光文字盤、極細太陽電池の開発等により、太陽電池の配置をあまり気にせず、自由な時計のデザインができるようになりました。
太陽電池でフル充電に要する時間は、一般的な蛍光灯のついている部屋においた場合、約175時間(照度700LUXとして)、快晴の野外で太陽のもとで、約3時間(照度10万LUXとして)が目安となります。
キネテック、エコドライブ、タフソーラーなどの充電式に共通する注意事項があります。 それはキャパシタ、蓄電池を完全に放電してはいけない、ということです。 いくら省エネでも、1年もほおっておかれれば、電池は完全に放電してしまいます。 そうすると蓄電池が劣化してしまい、次に充分な蓄電ができなくなります。 すると普通に使用しているにもかかわらず、1日2日放置しただけですぐに時計が止まってしまう場合があります。
長期間使用しない場合でも、定期的に動かし、太陽に当てて充電することを心がけてください。 とくにアナログ式のものは消費電力が大きいため、再充電する時は、リューズを引いて針の動きを止めて、消費電力を極力減らして、たっぷり充電することが必要です。