第17回  なぜロレックスは人気があるのか その2

前回(その1)も述べたとおり、ロレックスが設立された20世紀初頭、多くの時計ブランドは、精度向上や華美な装飾で顧客を獲得しようとしていましたが、ロレックスは、実用性を追求するため、完全防水の実現を目指しました。その結果、ロレックスの顔とも言える、オイスターケースの開発に成功しました。 オイスターケースは金属塊をくり抜き、潜水艦のハッチと同様の構造を持たせることで、高い気密性を確保しています。 また、ねじ込み式裏蓋とゴム製のOリングの組み合わせにより、世界最高の防水性能を確保しています。
ロレックスはケースに使用する材料を吟味し、良質な材料を開発すると同時に、一般のメーカーでは、数回しかプレスしないところを、最低でも16回以上、プレスし、金属の密度を高め、耐久性を飛躍的に向上させています。その一方で素材が硬くなるため、加工が非常に困難になります。 しかしロレックスは、他社に真似のできない高い加工技術により、最高の加工精度と丁寧な仕上を実現しています。 当然コストは上がりますが、「完全な防水性」を実現するための妥協のないロレックスの姿勢が伺えます。
完全防水に対するロレックスのこだわりは裏蓋にも現れています。 通常ねじ込み式の裏蓋は、開閉器具を引っかけるための窪みが、対称に偶数個付けられていますが、その窪みにより、裏蓋の厚みが不均一になります。また、工具を使用する際も、その部分のみ力が加わることになります。メンテナンスの際、裏蓋を何度も開閉することにより、工具の力が不均一にかかり、蓋に歪みが生じ、防水性能が損なわれる危険があります。
そこでロレックスは、裏蓋の全周に均一に細かい刻みをつけ、裏蓋全周にすっぽりかぶさる専用の工具で開閉するようにしました。 ロレックスの高い加工技術があってこそ可能であったことですが、これにより、裏蓋の厚みが均一になり、工具の力も均一に加わるようになったため、裏蓋に歪みを生じにくくなり、防水性能の向上になったことと、さらに他者が勝手に裏蓋を開けられなくなり、メンテナンスを自社できちんと管理された状態で行うことが出来るようになりました。 さらに、1952年に特許を取得したばね仕掛けのねじ込み式リューズ「トリプルロックリューズ」により、防水性能が強化されました。 これは時計を操作するためにどうしても強固なオイスターケースに穴を開ける必要があり、その穴からの浸水を防ぐためのアイデアでした。ねじ込み部分にばねでテンションをかけて、リューズが簡単に緩んでしまわないようにしています。 また、リューズの両脇にリューズガードが設けられ、リューズが何かとぶつかって変形し、防水性能が損なわれてしまうことを防止しています。
耐久性の追求はブレスレットにも及んでいます。 スポーツタイプに使用されるオイスターブレスはケース同様に金属塊より削り出し、堅牢性を高めるとともに、厚みや質感、存在感を最高の加工技術により優美に見せています。
また、文字盤の色、書体、蛍光インデックスの位置と大きさ、針のデザイン、太さなど徹底的に考慮して、最高の視認性を追求しています。こうした品質および信頼性の向上により、ロレックスは世界のトップブランドとして認められるようになっていったのです。