第18回  なぜロレックスは人気があるのか その3

ロレックスはオイスターケース等の外装部品のほかに、画期的な内部機構を開発しています。 それがパーペチュアルと呼ばれる両方向自動ぜんまい巻き上げ機構と、瞬時に日付が変わるデイトジャスト機構です。
世界で初めて自動巻き機構を発明したのはアブラハム・ルイ・ペルレで1770年のことです。 そして、1924年にジョン・ハーウッドが自動巻き機構を組み込んだムーブメントで特許を取得しました。 この時の自動巻き機構は手の動きに合わせてハンマーが左右に振れることでぜんまいを巻く「ハンマーワインディング方式」でした。 その後さまざまな方式が実用化されました。
ロレックスも自動巻きムーブメントを模索していましたが、どの方法も満足のいくものではなく、ついに自社で新たな自動巻き機構を開発しました。
ロレックスが考案したのは、ローターが360度回転して動力を貯えることのできる「ローターワインディング方式」でした。 自動巻き機構といえば、誰もがこの「ローターワインディング方式」を思い浮かべると思いますが、実はこの方式を最初に実用化したのはロレックスだったのです。この方式は1932年に「パーペチュアル」として商標登録されました。そして1933年には特許も取得しています。 ここで特筆すべきは、他の自動巻き機構に比較して2倍の巻き上げ効率を達成していたことです。
さらに50年代に入って、ローターがどちらに回転してもぜんまいが巻き上がる両方向巻き上げ機構を開発し、以後、この方式が世界の自動巻きムーブメントのスタンダードになっています。
また、ロレックスは長時間駆動させられるよう、ぜんまいにも工夫を凝らしました。 現在一般の自動巻きムーブメントが、ぜんまいをフルに巻上げた状態で40時間程度稼動しますが、ロレックスは50~70時間動きます。 ぜんまいを収める「香箱」を大きくすることは構造的に難しく、(ケース全体の大きさに関わってくるため)ロレックスはぜんまいを薄くして長さを確保することで実現しています。 金属を薄くすれば当然、耐久性が低下しますが、ロレックスは素材を改良することで解決しています。
もう1つのロレックスの発明であるデイトジャスト機構は1945年に特許をとっています。 機械式時計メーカーにとって、デイト機構は、
最もトラブルの起き易い部分です。 連続で動く針に対して、デイトは1日分だけ送る間欠送りになります。 デイト機構は通常、日付の描かれた回転板を夜中0時近辺で、徐々に回転させて次の日付を表示させます。 針駆動部と同じばねでギアを駆動するため、日付更新の間に駆動力を消費したり、針の動きが遅くならないように、通常はできるだけ時間をかけて日付更新を行います。 (安価なデイト付自動巻き時計では、日付が変わりきるのに、1時間以上かかるものもある)ロレックスはカレンダーホイールに設けられたカムと強力なヨークスプリングで瞬時のデイト切り替えを可能にしました。 これには非常に高度な技術が使われているのですが、驚くべきことは、この機構が初登場からすでに量産品であったということです。 耐久性や精度だけでなく、あらゆる機構にも究極を求め、それを実現してゆき、さらにそれを量産してしまうロレックスにあらためて脱帽です。